北米ギター放浪記 番外編#2「イタリアへ」 2008年7月28日 7時少し前に目が覚めて一服しにバルコニーに出ると、カップルはまだ熟睡していました。起こさないように気を付けていたのですが、すぐ下にある駅に列車が到着した音で彼女の方が目を覚ましました。2人で絵葉書のような景色を眺めながら話しているとG氏が起きてきてコーヒーを入れてくれました。ほどなく彼氏も目を覚まし、すぐに身仕度を始めました。2人は今日中にベルリンに戻らなくてはいけないので、あまりゆっくりはしていられないとのこと。彼女がまさに私の目の前で着替えだしたのには面食らいましたが、こちらではこれぐらいは騒ぐことではないのでしょう。朝からいい目の保養です。 2人と犬が慌ただしく出ていって間もなくG氏も仕事に出掛け、3時には戻るとのこと。ユーロレールパスが使えるので、フィレンツェに向かう夜行列車が出るチューリッヒまでは列車で行くつもりでしたが、G氏が車で送ってくれると言うので、ここは彼の親切に甘えることにしました。 こうして久し振りに1人っきりの時間ができたので、まずは近所を散歩することに。夜と違い、昼間のブレゲンズの通りは観光客で賑わい、土産物屋が軒を連ねたまさに観光地そのものでした。 1度アパートに戻り、G氏のパソコンでYouTubeへのコメントやメッセージに返信したり、弦を張り替えたりして昼までだらだらと時間を過ごしました。その後、新しい弦を馴染ませるためにバルコニーで弾いていると、隣のアパートのテラスからバスローブ姿の女性が手を振っているのが見えたので、私も手を振り返しました。平日の昼間だというのにまるで映画のワンシーンのようです。 3時少し前にG氏が帰宅し、向かいのバスローブの女性のことを聞いたら、かなり年配の方とのことでした。遠目にはブロンドの髪が陽の光にキラキラしていて年配には見えなかったのですが・・・。 G氏がシャワーを浴びている間に荷物をまとめ、4時前にアパートを出ました。前日はカップルも居たこともあり、互いの話しはあまりしませんでしたが、何年かニューヨークに住んでいたらしく、私もボストン時代に何度か行っていたので、その辺の話しから、少し前に別れた彼女とよりを戻すべきかどうかで悩んでいるという話しなどで盛り上がっているうちにスイスとの国境に差し掛かりました。一応パスポートを出しておきましたが、車内をチラッと覗いただけでそのまま通してくれました。チューリッヒは車も多く、予想に反して結構ゴミゴミとした街でした。2人ともお腹が空いていたので、適当なパーキングを見つけ、G氏が以前来たことがあるという健康食系のレストランに行くことに。バイキング形式の店で、偏食系の私にはどれもあまり美味しそうには見えませんでしたが、とりあえず食べれそうなものを適当に選んで腹を満たしました。その後、そこからすぐのコーヒーショップに行き、イタリア風のエスプレッソを頂きました。おちょこのようなコーヒーカップに一口で飲み干せそうな量が入っているやつです。 そうこうしているうちに列車の発車時刻が近付いて来たので、駅に向かうことに。駅前の交通量はかなりのもので、車を停める場所もなかったので、プラットフォームが見える場所で降ろしてもらい、そこでG氏とお別れということになりました。B氏の同僚というだけで急遽組み込んだブレゲンズでしたが、長旅の疲れをとるには最高の2日間でした。発車時刻まで10分ぐらいになっても、電光掲示板のプラットフォームの欄は空欄のままです。ロンドンからリバプールに行った時と同じで、直前まで分からないとのこと。かなり大きな駅なので、万一遠くのプラットフォームだったら間に合わないのではと心配になりましたが、すぐにでも走り出せる体勢で電光掲示板の表示が変わるのを待つしかありません。幸い、すぐ近くのプラットフォームだったのでことなきを得ましたが、日本の鉄道システムに慣れているとこのアバウトさには面食らいます。 列車はそれまでのドイツのモダンな作りのものからは一変してかなり年季の入ったものでした。寝台車ということで乗車前に切符拝見があり、イタリア語でまくしたてられ何を言っているのかはさっぱりでしたが、仕草から乗っていいことは分かりました。相部屋と個室の差が5000円ぐらいとのこと。旅の終盤で疲れているので少し贅沢して個室にしましたが、部屋もかなり古めかしく、通路に面したドアはロックされていますが、隣の部屋につながるドアはロックするつまみそのものが取れていました。向こう側で脚立のようなものでドアが開かないように固定しているのですが、駅に停まるたびに半開きになるお粗末な応急処置です。発車して間もなく車掌がパスポートを預かりに来たので(夜中に国境を越えるため)、もう少しちゃんと閉まらないものかと尋ねると、貴重品は抱えて寝ろとのこと。チューリッヒを出た時点では隣は空室だったので、そのまま誰も乗ってこないことを願いながら、言われた通り貴重品を枕の下に入れ、MacBookで寅を観ているうちにいつの間にか寝落ちしていました。 *文中に登場する人物は、本人の確認が取れるまではイニシャル表記にしてあります。 |
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はじめに
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