北米ギター放浪記 スタテンアイランドへ 2014年7月26日〜27日 インディアナ州ナッシュビルを夕方6時前に出発し、ひたすら東へと向かいました。コンテストそのものの結果はさておき、最も私が必要としていたものである「自信」を取り戻すことができたという意味では遠回りして寄った甲斐がありました。旅そのものが、ギターを通じた人との繋がりをテーマにしていたのに対して、この数日間だけはギタリストとしての力量のみが物を言う空間にいたわけです。自信などというものは、YouTubeでどんなに称賛されようが、悪気はなくても心ないたった一言で吹き飛んでしまうものなのです。 道中は、時折仮眠を取ったこと、オハイオ州のレストエリアのトイレがTOTO製だったこと、州によって道路の舗装具合が明らかに違ったことぐらいしか覚えていませんが、何とかパーティー前に一息つけそうな時間にスタテンアイランドに渡る橋の手前まで来ました。しかしここで渋滞にはまり、結局パーティー開始時間ギリギリに2日間お世話になるP氏宅に到着しました。すでに立食形式のパーティーは始まっていて、あとは私が到着して弾くだけという状態でした。 挨拶もそぞろにトランクからすっかり温まったギターを出して、PAがセットされているところに行くと、何とそこにはBOSEのL1システムがありました。広い会場でも綺麗なアコースティックサウンドを届けられるシステムです。AERの出番はなさそうです。10分ほどで音が出るようになると、それまで脇のテラスで立食していた人達が庭に移動してきて椅子に座り出し、チューニングを凝視される状態になりました。ほぼ24時間掛けて移動してきて10分で開始とはほぼ拷問のようなものですが、そのまま演奏会へとなだれ込んだのでした。リクエストタイムになる度にP氏の「フリーバード!」というオヤジギャグが聞こえたことと(最初に曲を知らないと断った)、皆さんが笑顔だったことは覚えていますが、あとは、何を弾いたのかはほとんど記憶にありません。間に合ってよかったという安堵感でいっぱいだったのでしょう。 終演後に、以前私のCDを購入されたという方からサインを求められたり、別の方のたっての希望で本編では弾かなかった「ノルウェーの森」を弾いたこと、煙草を毛嫌いするP氏の手前、ほぼ隣の家の前まで行って一服していると、そこの住人も玄関先のポーチで一服していて仲良くなったことなどは不思議と覚えています。その後、初めてP氏の家に入れてもらい、ダイニングキッチンで残り物を頂き、寝室に荷物を運んだところまでは覚えていますが、すぐに眠りについたのでしょう。気付いたら翌朝でした。 *文中に登場する人物は、本人の確認が取れるまではイニシャル表記にしてあります。 |
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はじめに
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