北米ギター放浪記 バッファローへ 2014年8月4日〜6日 何とかトロント方面に向かう高速に乗ることができ、アメリカに戻る旅が始まりました。途中、何度か休憩を挟みながら西に向かい、昼過ぎにはシャワーに3日も入っていない不快さに耐えきれなくなり、Napaneeという高速沿いの小さな町で見つけたモーテルにチェックインしました。フロントに行くと、西アジア系の方がいて、背後から聞こえる声の様子から家族経営であることが分かりました。チェックインの手続きをしながら「どちらから?」と尋ねると「インド」とのこと。「旅行?」と聞かれたので、ざっとここまでの旅の話をし、モントリオールからは迷子状態であることを伝えると、この地に日本人が来ること自体珍しいことで、しかも迷子の旅行客は初めてだそうです。こういう何気ないやり取りは気分を落着かせてくれます。自分の中で張り詰めていたものが緩んでいくのを感じました。部屋に入ると、ベッドの上に各国後の歓迎メッセージがあり、何と日本語もあるではないですか。しかも、思わず微笑んでしまうオチまでついて。 この時のシャワーとベッドは本当に有り難かったです。カナダに来て初めて一息つけました。翌朝、チェックアウトに合わせて車に荷物を運んでいると、フロントのR氏と奥さんのB氏が部屋の前まで来て、そこでまたしばし談笑し、出発を見送ってくれました。まるで旅館にでも泊まったような気分です。 トロントは、北米大陸で2番目に大きな大都会です。順調に進めばラッシュ時にぶつかるのは必至だったので、せめて夜中に抜けたいということで、レストエリア(カナダではOnRouteと呼ぶ)を見つける度に寄ってのんびりと西へ向かいました。トロントまで150キロぐらいの場所にあったOnRouteでは、喫煙場所でイタリアから来たP氏と連れの女性S氏と知り合い、話しをしていると、P氏はアコースティックギター弾きで、トロントでのイベントに参加してこれからイタリアに戻るとのこと。私もギター弾きのはしくれであることを伝え、来年ローマで再会する約束をしました(この約束は果たせませんでした)。後日、この方がアコギ界ではそこそこ名前の通った方で、イベントもアンディー・マッキー氏などとの共演だったと知り、そういう方とこのような場所で会ったことに偶然以上の何かを感じたのでした。 計算通りトロントを夜の10時ぐらいに走り抜け、そこからは南下することに。深夜に「Niagara Falls」の文字が目に入り、もしかしたらナイアガラの滝の近くにいるのかと車を路肩に停めてみましたが(他に走っている車もほとんどなかった)、あたりは漆黒の闇です。地図を見ると、そんなに離れていないのでエンジンを止めて音だけでも聴こえるかと耳を澄ましましたがシーンと空中に書いてあるぐらいの静寂です。またいつか明るいうちに来ようということで再び走り出すと、ほどなくして国境があり、行きよりさらに簡単な審査で通り抜け、めでたくアメリカ国内へ帰還することとなりました。場所はニューヨーク州バッファローです。安心するとお腹が空くものです。高速を降りて最初に見つけたデニーズでいつもの55歳以上メニューの朝食を注文しました。朝昼晩関係なく朝飯なのももう慣れました。この時ほどiPhoneの電波が立っていることが嬉しかったことは後にも先にもありません。 安心してお腹が満たされると当然のように眠気が襲ってきます。そこから少し南下した場所にあったレストエリアで車中泊をすることに。地鳴りのような音がする中で熟睡し、翌朝目が覚めるとそこには圧巻の景色がありました。地鳴りの理由はこいつらでした。トラックはエンジンを切らないみたいです。 *文中に登場する人物は、本人の確認が取れるまではイニシャル表記にしてあります。 |
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はじめに
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