北米ギター放浪記

マイアミ

2014年7月17日

1980年に諸事情からシアトルの短大に居れなくなり、一度出国してから別の学校に転校することになり、その際懇意にしてくれた先生から「ボストンとマイアミのどっちがいい?」と聞かれたので「マイアミ」と即答しました。気候が良さそうというのが理由でした。ところが、まさにその日にマイアミで暴動が起き、テレビのニュースに釘付けになりながら「ボストンにしよう」と決めたのでした。翌日、先生にそのことを伝えて紹介状を書いてもらったのがバークリー音楽院でした。当時の私はアメリカに滞在することが目的だったので、正直どこでもよかったのです。30数年を経て一度は行きそびれたマイアミに向かっていることにワクワクしている自分がいました。

しかし、浮かれていられたのも束の間、マイアミに近付くにつれ運転の荒い車が増えてきました。少なくともこれまで走った中では最も緊張を強いられるドライブでした。煽られながらとにかく南下していると、月末にニュージャージーで会うことになっていたD氏から「マイアミの予定は?」とメッセージが入り、「特にない」と返事すると「Boca Ratonというテラスで演奏できる」との有難い情報。てっきりオープンマイクでもやっているお店だと思い込んで指定された住所に行ってみると、そこはビーチに面した無人のテラスでした。

はるばるマイアミまで来て「何やってんだ?」と自分自身に少し呆れた気持ちになりましたが、気を取り直してギターを弾き始めると、数人いた方達が親指を立ててくれたり笑顔で頷いてくれたりするので救われたのでした。少しすると、子供が1ドル札を手に私の前まで来て足元に落としました。この時点では、ケースは閉めて横に置いていたのです。「ありがとう」とお礼を言って見上げると、親御さんらしき人が笑顔でこちらを見ているのでそちらにも会釈しました。少し欲が出てケースを開いて足元に置いたのですが、すでに夕暮れ時だったこともあり、元々まばらだった人もまったくいなくなり、唯一D氏の知り合いという方が来てくれたので証拠写真を撮ってもらいました。

街の雰囲気から車中泊は危険だと察知し、真っ暗になる前に泊まる所を確保せねばと安モーテルをネットで見つけて押さえました。窓から見える通りには、酒瓶を振り回しながら叫んでいる人がいたので、鍵をしっかり掛けて眠りについたのでした。

*文中に登場する人物は、本人の確認が取れるまではイニシャル表記にしてあります。

「タンパ 2 days」Supporter's Area「オーランド 2 days」

目 次

はじめに
出国まで
シアトル
カリフォルニアへ
休息日
サニーベール
LAへ
レドンドビーチ
ツーソンへ
アルバカーキ
コロラドへ (奇跡の旅の始まり)
バーザウド
デンバー
オクラホマシティーへ
オクラホマシティー 2 days
テキサスへ
サンアントニオ
ジョージタウン
ダラス
ヒューストン 2 days
ベントン
ナッシュビル (CAAS)
ロスウェル
タンパ 2 days
マイアミ
オーランド 2 days
マートルビーチ
チャペルヒル 3 days
キングスポート
インディアナへ
インディアナ州フィンガースタイルコンテスト
スタテンアイランドへ
マンハッタン
フィリップスバーグ
ナザレス(マーチン工場)
マサチューセッツへ(奇跡の完結)
メシュエン
モントリオールへ
バッファローへ
メドヴィル前乗り
メドヴィル幽霊ホテル
デトロイト
シカゴ
ミネアポリス
番外編
番外編#2「2008年欧州ツアー/出発まで」
チェコ1
チェコ2
ロンドン
リバプール
チェシャム
ドイツへ
レムゴ
インゴルシュタッド
ブレゲンズ
イタリアへ
フィレンツェ
最後のライブ
帰国