北米ギター放浪記

チャペルヒル 3 days

2014年7月21日〜23日

今回の旅の公表後に最初に連絡をくれたのがノースカロライナ州のD氏でした。近所に脳梗塞で全身麻痺になった方がいて、よくギターを弾きに行っているとのこと。もし、私が寄れたら有り難いという内容のかなり遠慮がちなメッセージでした。もちろん「行きます」と返事しました。この州には中高からの友人であるT氏も住んでいて、2泊3日と少し余裕を持った日程にしていたので、まずは、この友人の家に行き、D氏の家には翌日の22日に伺うことになっていました。ノースカロライナ州は、北海道、九州、四国を全部足したぐらいの面積があり、下手すると1日掛かりになることもあるわけで、時間は友人の家に着いてから決めることにしていました。

サウスカロライナ州からノースカロライナ州に入ると、まるで南部から北部に来たように道の幅や曲がり具合、景色などが一変したように感じました。マートルビーチからはナビで4時間弱と比較的楽な移動でしたが、シトシトと雨が降っていたのも手伝って、通りがかった小さな町の朽ちた店舗の様子が映画のワンシーンのように見えて思わず車を停めたりと、のんびりとした旅となりました。

T氏の家は、森に囲まれた風情のある一戸建てで、まるで葉山の海岸から一気に軽井沢に来たような感じです。彼とは卒業後にもワシントン州で数年一緒だったりと、比較的頻繁に顔を合わせていて、今回はおそらく2年振りぐらいの再会だったと思います。

到着後、しばし互いの近況報告をしてから、D氏に明日伺うので住所を教えてくれとメッセージを送り、返って来た住所をiPhoneのナビに入力して現在地からの距離を調べたら7分と出ました。何かの間違いだろうと現住所を入れ直してもやはり7分です。これまでは短くても3時間、長ければ8時間以上などが当たり前だったので、7分は奇跡のような近さです。T氏に住所を見せると、引っ越し先としてその家の隣の家も見に行ったとのこと。唯一予定していたものが、近所のコンビニに行く程度だと分かった途端、気分は一気に休息モードになりました。ナッシュビルで一息ついたとはいえ、すでに10,000キロ以上走っていて、この後もまだ倍以上の行程が残っています(旅の本編後の移動も含め)。休めるときに休んでおくに越したことはありません。この時T氏は夜勤をしていて、私が来ている間は休みを取ってくれていたのですが、午後に寝る習慣があるとのことで、92年以来に再会した奥さんのJ氏ともゆっくりと話すことができました。

翌日は、T氏と一緒にD氏宅に行き、D氏の奥さんにも挨拶をしてから通りを挟んだ向かいの家に行きました。T氏はD氏宅の隣の家を見て「ここ見に来たんだ」と呟いていました。お名前は聞きそびれたか聞いても忘れたようで思い出せませんが、ここでの演奏はある意味この旅のハイライトの一つだったと思います。話は介護士を介してしかできないぐらい重症な方でしたが、私が演奏を始めると笑顔になり、口の動きは明らかに歌っていました。私のつまらない冗談にも笑顔を見せてくれ、音楽の力をリアルタイムで実感できる貴重な時間でした。もっとこういうシチュエーションでの演奏を設けたかったです。

その晩は、T氏夫妻と3人で近所のレストランで食事をし、その後T氏と二人で大学があるあたりまでドライブしました。別荘地みたいな環境に不満はないけど、人恋しくなるとのこと。分かるような気がします。私も一緒に若者達から鋭気を貰ったのでした。

T氏の家に滞在している時に、ワシントン州のL氏から数日後にインディアナでフィンガースタイルコンテストがあるとの情報が届きました(このL氏は、私の「Will You Dance?」のビデオをジャニス・イアン氏に紹介してくれた方です)。コンテストのページに行くと、本番数日前にも関わらずまだ受け付けています。行くこと自体は日程的に問題はないのですが、コンテスト翌日の夕方にニューヨーク州スタテンアイランドに行くことが決まっていたのが大問題でした。ナビによれば12時間以上も掛かり、夜通し走っても間に合うかどうか分からない距離です。コンテストの詳細を見ると、一次審査が昼過ぎから始まり、その後上位5名による決勝があり、最終的に3位までに入るとその晩のステージで演奏するとあります。出る以上は勝ちたいと思うわけですが、夜のステージまで残るとスタテンアイランドまでの移動が大変なことになります。こういう時は「やらずに後悔するより、やって後悔する」を選ぶのが私です。今回の旅自体、この考えがあって実現しているわけですから。登録を済ませてから再度詳細を見ると、賞品は1〜2等はギターで3等は$100となっています。ギターは荷物になるので、狙うは3等しかありません。

翌朝、T氏が道中用にと握ってくれたおむすびを受け取り、再会を誓ってから次の目的地であるテネシー州キングスポートを目指しました。下の写真は、この州出身であるジェームス・テイラーに因んだその名も「ジェームス・テイラー・ブリッジ」です。

*文中に登場する人物は、本人の確認が取れるまではイニシャル表記にしてあります。

「マートルビーチ」Supporter's Area「キングスポート」

目 次

はじめに
出国まで
シアトル
カリフォルニアへ
休息日
サニーベール
LAへ
レドンドビーチ
ツーソンへ
アルバカーキ
コロラドへ (奇跡の旅の始まり)
バーザウド
デンバー
オクラホマシティーへ
オクラホマシティー 2 days
テキサスへ
サンアントニオ
ジョージタウン
ダラス
ヒューストン 2 days
ベントン
ナッシュビル (CAAS)
ロスウェル
タンパ 2 days
マイアミ
オーランド 2 days
マートルビーチ
チャペルヒル 3 days
キングスポート
インディアナへ
インディアナ州フィンガースタイルコンテスト
スタテンアイランドへ
マンハッタン
フィリップスバーグ
ナザレス(マーチン工場)
マサチューセッツへ(奇跡の完結)
メシュエン
モントリオールへ
バッファローへ
メドヴィル前乗り
メドヴィル幽霊ホテル
デトロイト
シカゴ
ミネアポリス
番外編
番外編#2「2008年欧州ツアー/出発まで」
チェコ1
チェコ2
ロンドン
リバプール
チェシャム
ドイツへ
レムゴ
インゴルシュタッド
ブレゲンズ
イタリアへ
フィレンツェ
最後のライブ
帰国