北米ギター放浪記

LA 2 days

2014年6月20日〜21日

LAの二日目は、レドンドビーチにあるコーヒーハウスで演奏しました。前日の晩に到着していたことで休養十分で臨んだわけですが、多少気が緩んだのでしょう。徒歩でも十分行ける距離ではありましたが、機材もあったのでT氏の車で店まで行き、セッティングを始めてすぐに機材の一つをT氏宅近くの路上に停めた車の中に忘れてきたことに気付きました。開演予定時間まではまだ時間があったので、歩いて車まで行き、再びそこから店に向かったところ完全に迷子になりました。夕暮れ時のいい感じの気温ではありましたが、開演時間が迫る中で見知らぬ土地で迷子になった焦りから汗だくになりました。結局はT氏から電話で「どこにいる?」と連絡が入り、周囲に見える店や看板を伝えて現在地を把握し、何とか開演時間ギリギリに到着したのでした。

公の場での演奏は、シアトルの楽器屋以来でした。店内には椅子に混ざってソファなどもあり、本を読みふける人、ノートブックを開いて作業している人、すぐ隣にあるバー(恐らく同じ店)で飲んだのか少し酔い気味の人などがいて、かなりくつろいだ雰囲気を醸し出していました。有り難いことに、私のファンだと言う人も何名か駆け付けてくれました。演奏が始まればLAも横浜も同じです。時折リクエストに応えながら3時間近く弾きました。この頃には鈍っていた英語での会話もだいぶ勘が戻り、語彙は少ないながら客を笑わせようとしている自分がいました。

翌日は、夜にT氏の知り合いの自宅で開かれるパーティーでBGM演奏をすることになっていました。昼間は、楽器屋やLAで一番美味しいとされているハンバーガー屋などに連れて行ってもらいました。T.G.I. Fridaysのバーガーとの違いは分かりませんでしたが、マックなどのファーストフード系のものとは明らかに違うものでした。私らの横で、80歳は有に越えていると思われる大柄な老人が、両手に余るほどの大きいバーガーを頬張っているのを見て、豆腐やひじきなどを箸で摘みながら食べる日本の食文化のきめ細やかさに改めて感心しました。

知り合い宅はそれはまた立派な家で、パーティーは二階で開かれていたのですが、30人以上は来ていたと思います。前日のライブに来れなかったという日本人の方が、何とかこの日のに参加できないかと問い合わせがあったので、お願いして入れてもらいました。その方は、ギター持参で来られ、私にサインをして欲しいとのこと。以前、マレーシアでしたことはありますが、これはかなり緊張します。

パーティーの間中私はほぼ弾き放しだったので、皆さんと会話する機会は少なかったのですが、ここで面白い実験ができました。演奏はリビングの一角で行うことになり、セッティング後に音出しをしたわけですが、仕切りなしで続いているダイニングやキッチンで立ち話をしていた10名ほどの人達の話し声が明らかに大きくなったのです。音量はBGMということで控え目でした。そこで、リビングの方に座っていた5〜6名に向かって「ダイニングやキッチンの人達の様子を観察すると面白いことが起こりますよ」と小声で伝え、少し弾いては1分ほど弾かないというのを繰り返したところ、まるでボリュームツマミを操作しているように話し声の大きさが変わったのでした。リビングにいた方達もちょっと驚いたような顔で頷いていました。日本でもBGM演奏ではこのようなケースを幾度となく経験していましたが、国は関係ないようです。

深夜近くになってパーティーもそろそろお開きになってきた頃合いで、私も演奏をやめてキッチンの方に行き、残り物を少しずつ摘んだのでした。その晩は、そのままアリゾナ州ツーソンに向かう予定だったので、がっつりと食べるわけにはいかなかったのです(眠気を誘うので)。すると、その家の方やT氏の奥さんなどが、アルミホイルに小分けして包んだものを渡してくれました。こういう気遣いには涙が出ます。お世話になったT夫妻とはこの家の前でお別れとなりました。たった二日間でしたが、寂しさの漂う別れでした(実は二ヶ月後にまたお世話になるのです)。

*文中に登場する人物は、本人の確認が取れるまではイニシャル表記にしてあります。

「LAへ」Supporter's Area「ツーソンへ」

目 次

はじめに
出国まで
シアトル
カリフォルニアへ
休息日
サニーベール
LAへ
レドンドビーチ
ツーソンへ
アルバカーキ
コロラドへ (奇跡の旅の始まり)
バーザウド
デンバー
オクラホマシティーへ
オクラホマシティー 2 days
テキサスへ
サンアントニオ
ジョージタウン
ダラス
ヒューストン 2 days
ベントン
ナッシュビル (CAAS)
ロスウェル
タンパ 2 days
マイアミ
オーランド 2 days
マートルビーチ
チャペルヒル 3 days
キングスポート
インディアナへ
インディアナ州フィンガースタイルコンテスト
スタテンアイランドへ
マンハッタン
フィリップスバーグ
ナザレス(マーチン工場)
マサチューセッツへ(奇跡の完結)
メシュエン
モントリオールへ
バッファローへ
メドヴィル前乗り
メドヴィル幽霊ホテル
デトロイト
シカゴ
ミネアポリス
番外編
番外編#2「2008年欧州ツアー/出発まで」
チェコ1
チェコ2
ロンドン
リバプール
チェシャム
ドイツへ
レムゴ
インゴルシュタッド
ブレゲンズ
イタリアへ
フィレンツェ
最後のライブ
帰国