北米ギター放浪記

ベントン

2014年7月5日〜6日

深夜過ぎに出たのは正解でした。道も空いていて真っ暗闇ながら快適なドライブでした。途中、逆走するピックアップとすれ違った時は肝を冷やしましたが、独立記念日の夜です。これぐらいのことはありなのでしょう。バックミラーを見ながらその車が事故らないことを願うのみでした。

翻訳は最悪の結果に終わってしまいましたが、肩の荷が下りたのもまた事実でした。晴々とは言わないまでも、旅に集中できるようにはなりました。途中レストエリアでの仮眠を挟みながら、午後3時過ぎには目的地であるアーカンソー州ベントンに到着しました。

この日の会場として教えられたミュージックストアの住所に行くと、どう見ても廃業したガソリンスタンドで、ちょい悪風のオジさんがフランクフルトを焼いています。何かの間違いかと思い、そこを通り過ぎてダウンタウンらしきところに行くと、そのまま西部劇が撮影できそうな何とも風情のある町でした。ただ、地元との縁のない私のようなアジア人が迷い込むと歓迎してくれるかどうかは定かではありません。再びiPhoneのナビに住所を入れ直して向かうと、また元ガソリンスタンドに戻りました。もうフランクフルトを焼いているオジさんに聞くしかありません。車から降りてオジさんの方に向かうと「ヒロシか?」とそのオジさん。よく見ると、ドアのところにギターレッスンの文字もありました。このオジさんがこの元ガソリンスタンドをそのままミュージックストアにして経営しているD氏で、この日のステージのプロデューサーだったのです。彼はギターの先生もしているとのこと。

そのうち私をこの地に呼んでくれたL氏とその旦那さんの妹のR氏、L氏の息子さん夫婦などが集まって来てしばし談笑した後に中に入ると、中もガソリンスタンド時代のままでした。皆さんとにかく南部訛が強く、慣れるまで少し時間を要しました。入って右側のドアを開けるとステージのあるホールがあり、その奥にはPro Toolsが稼働中のミキシングブースがありました。サウンドチェック中に続々と人が集まり始め、開演前にこの日のカメラ担当という方を紹介され、見渡すと数台のカメラが設置されています。お決まりの「今日は誰か来るの?」ジョークで一気に場が和んだのでした。

そこにいる方全員が間違いなく日本人と接するのは初めてだったと思います。最初のうちは、ソニー、トヨタ、セイコー、ニコンで有名な日本、でも実際にそこから来たのはどんな奴なんだろう的な空気が漂っていましたが、濃いステージを終えた頃には皆さん笑顔で、その頃には私が日本人だろうが何だろうが関係ないという空気になっていました。音楽が持つパワーを改めて感じたのでした。

その晩はL氏の息子さん夫婦の家に泊めてもらい、寝る前にも少しリビングルームライブをしたのでした。翌朝は、犬が怪我をしていてライブに来れなかった旦那さんに会いにL氏の家に向かいました。妹のR氏もいて4人で談笑した後に次の目的地であるナッシュビルを目指しました。恐らくここだけだったと思いますが、珍しく私の車が完全に見えなくなるまでフロントポーチから身を乗り出して見送ってくれました。こうして、旅の前半戦が無事終了したのでした。

*文中に登場する人物は、本人の確認が取れるまではイニシャル表記にしてあります。

「ヒューストン 2 days」Supporter's Area「ナッシュビル(CAAS)」

目 次

はじめに
出国まで
シアトル
カリフォルニアへ
休息日
サニーベール
LAへ
レドンドビーチ
ツーソンへ
アルバカーキ
コロラドへ (奇跡の旅の始まり)
バーザウド
デンバー
オクラホマシティーへ
オクラホマシティー 2 days
テキサスへ
サンアントニオ
ジョージタウン
ダラス
ヒューストン 2 days
ベントン
ナッシュビル (CAAS)
ロスウェル
タンパ 2 days
マイアミ
オーランド 2 days
マートルビーチ
チャペルヒル 3 days
キングスポート
インディアナへ
インディアナ州フィンガースタイルコンテスト
スタテンアイランドへ
マンハッタン
フィリップスバーグ
ナザレス(マーチン工場)
マサチューセッツへ(奇跡の完結)
メシュエン
モントリオールへ
バッファローへ
メドヴィル前乗り
メドヴィル幽霊ホテル
デトロイト
シカゴ
ミネアポリス
番外編
番外編#2「2008年欧州ツアー/出発まで」
チェコ1
チェコ2
ロンドン
リバプール
チェシャム
ドイツへ
レムゴ
インゴルシュタッド
ブレゲンズ
イタリアへ
フィレンツェ
最後のライブ
帰国