北米ギター放浪記 メシュエン 2014年8月1日〜3日 奇跡の繋がりに寒気すら覚えながら感じの悪いモーテルを後にし、翌日の晩に演奏することになっているマサチューセッツ州メシュエンを目指しました。少しでも長くこの素晴らしい旅を続けたいとの思いから、この時点で更に北のモントリオールまで行くことは決めていました。当てはありませんが、この時の私はどこか神懸かり的なものを感じていたので怖いもの知らずになっていたのでしょう。当初は、メシュエンの翌日に一応最終学歴校である(中退ですが)バークリー音楽院でも見に行こうかと思っていましたが、土曜日はモーテル代も高くなり、メシュエンが同じマサチューセッツ州でもボストンからかなりの離れていたので、次の機会に取っておくことにしました。この頃からレストエリアや駐車場などで出会った人達とも話す機会が増え始め、これが後にまた面白い出会いに繋がることになります。下の写真はこの道中で出会ったトラックドライバーのJ氏です。 マサチューセッツ州内のモーテルはどこも満室で、仕方なく北隣のニューハンプシャー州の安モーテルにチェックインし、まずは洗濯をしました。夜は近所の大型スーパーで巻き寿司とお茶を購入し、少し贅沢をしたのでした。醤油が恋しかったのです。鮮魚コーナーにあったその巻き寿司、調理している人に「具は何?」と聞いても「知らない」と、かなりアバウトなもので、お茶も甘味料が入っていないものが見つからず、仕方なく蜂蜜入りで落着くことに。何か違うとは思いつつも醤油を満喫したのでした。 モーテルでテレビを着ける度に何度か目にした日本政府が制作したと思われるコマーシャル、たまたま手元にビデオカメラがあったので途中からですが録画しました。これからは女性が活躍する時代というメッセージを最後には安倍首相も出て来て訴えるものでしたが、逆にこれまでは女性を活躍させなかったと受け取ることもできるので、見ていて余り気持ちの良いものではありませんでした。 翌朝、メシュエンで演奏する雑貨屋/本屋/カフェが一体となった店のオーナーであるビル・ゴッドウィン氏から、私が来るのを楽しみにしていたギター仲間のD氏が手術を受けたばかりで安静が必要とのことで来れなくなったと連絡が入りました。昼間は特に予定がなかったので、D氏さえ構わなければ私の方から出向きますと返事したところ、是非とのことでD氏の住所が送られてきました。実は留学時代も東に移動してからは運転をしなかったので、西にはない曲がりくねった道を運転するのが新鮮で楽しかったのです。頭の中には常にグレン・ミラーが流れていました。iPod touchには新しい録音のものは入っていましたが、どこか違うのです。聴こえてくるのは鮮明な音のものではなく古い録音のものなのです(結局数週間後に西で入手しました)。 D氏はジャズ系のフィンガースタイリストで、二人でギターを抱えながら楽しい時間を過ごしました。氏の体調のことを考慮し、一時間ぐらいで失礼しましたが、こちらが恐縮するぐらい私が来たことを喜んでくれました。こういう機動性もギター弾きならではです。 メシュエンでの演奏は、落着いたかなり出来のいいものだったと自分では感じました。一番手前に座っていたお客さんが仕切りにアクビを我慢していたので、私には人を眠くさせる特殊な能力があるので、遠慮なくアクビをしてくれとお願いしました。その方は全力で否定していましたが、私の目は節穴ではありません。実際、日本でも初対面の人にアクビを我慢されることが多いのです。後半の頭にフィリップスバーグのピノから「元気か?」と電話が入るハプニングがありましたが、それも場の雰囲気を和ますのに一役買ってくれました。西や南と比べると北東部はお客さんがおとなし目で、どちらかと言うと日本と雰囲気が似ていたので、こういうのは助かるのです。
ほぼリサイタルのようなライブも無事終了し、お世話になったビルとの別れを惜しみながら、モーテルで見つけていたケベック州モントリオールでオープンマイクをやっている店を目指したのでした。国境を越えることに関しては調べた限り問題ないとのこと。 *文中に登場する人物は、本人の確認が取れるまではイニシャル表記にしてあります。 |
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はじめに
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